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2006年05月20日 (土)

小学校から英語を教えることは、日本を滅ぼす最も確実な方法です。

 前回の記事で、1年間のブログ執筆を通した際に得たことを読書能力向上と、読書の重要性に気付いたことと述べた。では、文章力は向上しただろうか?ここでの文章力とは、内容が面白い文章を書く能力ではなく、わかりやすい文章を書く能力とする。
 内容が面白いと思うのは、読み手の興味に依存するので書き手の努力の範疇を超えるからだ。面白さの質をあえて、努力するとしたら、書籍の多読であろうか。
 わかりやすい文章が書けるようになったかというと自信がない。仕事の報告書がわかりにくいと言われることがあるからだ。
 このような時に、つい「英語ができたなぁ」と思ってしまう。物事を論理的に表現する上で英語が優れた言語のイメージがあるからだ。

 私の動機と必ずしも合致しないが、8割の国民が、「英語がもっとできたら」と思っているとのこと。また、「小学校からの英語教育」や「英語の第二公用語化」の話題をしばしば耳にする。
 全国民がそこまで英語教育に時間を費やすことが、果たして、ありがたいことだろうか?

 英語を使えば誰でもが論理的でわかりやすい報告書が書けるのかという疑問を考える上で、まず、ベストセラーの「国家の品格」にて、「小学校から英語を教えることは、日本を滅ぼす最も確実な方法です。」と言い切る藤原正彦教授の他の書籍を引用する。

・(三)国語は論理的思考を育てる
 祖国とは国語  藤原 正彦 (著)
 アメリカの大学で教えていた頃、数学の力では日本人学生にはるかに劣るむこうの学生が、論理的思考については実によく訓練されているので驚かされた。大学生でありながら、(-1)×(-1)もできない学生が、理路整然とものを言うのである。議論になるとその能力が際立(きわだ)つ。相手の論理的飛躍を指摘する技術にかけては小憎たらしいほど熟練しているし、自らの考えを筋道立てて表現するのも上手だ。
 これは、学生に限られたことでなく、暗算のうまくできない店員でも、話してみると驚くほどしっかりした考えを持っているし、スポーツ選手、スター、政治家などのインタビューを聞いても、実に当を得たことを明快な論旨で語る。
 これと対象に日本人は、数学では優れているのに論理的思考や表現には概して弱い。日本人学生がアメリカ人学生との議論になって、まるで太刀打ちできずにいる光景は、何度も目にしたことだった。語学的ハンデを差し引いても、なお余りある劣勢ぶりであった。
(後略)
祖国とは国語
新潮社 [著] 藤原 正彦
ASIN:4101248087 /文庫/236頁
発売日:2005-12
ランキング&評価:---位 4.5
価格:¥ 420 [2006-06-15 Amache]


 日本人が、言語を単に日本語から英語に変更しても、アメリカ人を唸らせるほどの論理的思考が発揮できなかったようだ。
 同様に、日本人の英文も理解し難いようである。結局、言語の違いによる論理的思考への影響はなかった。

・「一段落一話題」に徹する
 ビジネス文完全マスター術  篠田 義明 (著)
 「早稲田大学-ミシガン大学 科学・工業英語検定試験」という英文文書作成の能力をみる試験がある。日本人が作成した英文が、英米人に理解してもらえるかどうかをチェックするもので、一級は、問題の作成も採点もミシガン大学で行われる。その講評を見ると、毎年、次のような指摘がある。
 「一つ一つの文は理解できても、パラグラフ(段落)全体を通して読むと、何が言いたいのか理解できない。つまり、日本人の多くは、読み手が理解しやすいパラグラフで文章を書いていない」
(後略)
ビジネス文 完全マスター術
角川書店 [著] 篠田 義明
ASIN:4047041459 /単行本/213頁
発売日:2003-09
ランキング&評価:---位 5
価格:¥ 720 [2006-06-15 Amache]


 では、日本人とアメリカ人の差はいったい何なのか?それは、教育である。
 
・コラム5:日本のお粗末なライティング教育
 論理的な文章が自動的に書ける!   倉島 保美 (著)
 日本の多くは、論理的に文章を書く教育を受けたことがありません。日本の教育システムでは、なぜか、論理的な文章を書くという教育が抜け落ちているのです。これでは、日本人の多くが論理的な文章を書けないのはしかたありません。
 私の経験上、論理的な文章を書く教育を受けてから社会人になる日本人は、5%もいません。たまに教育を受けたことがあるという新社会人もいますが、その約半数は、留学先で教育を受けています。
 日本の小中高校では、論理的な文章を書くことを、全くと言ってよいほど教えていません。作文の授業はありますが、視点や表現を中心とした指導で、論理的な文章の指導ではありません。むしろ、現場の教師は、いかに多くの文章量を書かせるかに、努力の大半をつぎ込んでいます。
 また、日本の大学でも、論理的な文章を書くための講義はほとんどありません。多くの大学が、学生に卒業論文を課しているにもかかわらず、どう論文を書くかは指導していないのです。たまに、表現技法のような講義を設けている大学もありますが、専門外の講師がボランティア的に指導しているにすぎません。
論理的な文章が自動的に書ける!
日本実業出版社 [著] 倉島 保美
ASIN:4534036922 /単行本/214頁
発売日:2003-12-18
ランキング&評価:---位 3.67
価格:¥ 1,365 [2006-06-15 Amache]
5 - 論理的な文章だと自動的に読める!
5 - 類書にないわかりやすさ&論理性
1 - ネタばれですよ


 実は、論理的でわかりやすい文章を作成する能力は、文章中の段落(パラグラフ)を展開するルール(パターン)を学ぶことで、誰にでも身に付くのである(私自身ができているかどうかは別・・・)。パラグラフ展開パターンは、いくつかあるが、その一例を引用する。

・どんなテーマでも、「型」を守って書く
 ホンモノの文章力  樋口 裕一 (著)
(前略)
賛成する場合
[?.問題提起]
 会話中心の英語教育にすべきか。
[?.意見提示]
 確かに、会話を勉強するだけでは、深く言語を理解することはできない。だが、会話ができないのでは、外国語を学ぶ意味がない。
[?.展開]
 生きた言語を学んで意見交換するのが言語を学ぶ意味だ。会話によってこそ、深く交流できる。今、人々が使っている言語で生身の人間と交流してこそ、意味がある。
[?.結論]
 したがって、会話中心の英語教育が望ましい。

反対する場合
[?.問題提起]
 会話中心の英語教育にすべきか。
[?.意見提示]
 確かに、会話も大事だ。しかし、会話偏重にすべきではない。
[?.展開]
 外国語教育の本質は表面的な会話ができることが目的ではなく、外国語を知ることによって、外国の文化を深く知ることである。
[?.結論]
 したがって、正確な文法を知って、文章を読解することのほうを重視すべきだ。
 (後略)
 
ホンモノの文章力―自分を売り込む技術
集英社 [著] 樋口 裕一
ASIN:4087200566 /新書/219頁
発売日:2000-10
ランキング&評価:---位 4.44
価格:¥ 693 [2006-06-15 Amache]


 それぞれの主張の正当性は別として、このようなパターンを知った上で文章を書く訓練をすれば日本人も論理的でわかりやすい文章を書くことができる。
 日本語や英語などの言語の違いにおける論理性の優劣はなく、妄想であった。まともな国語教育を受けたかった。嘆いても仕方がないので、書籍から学ぶしかない。ちなみにテクニカルライティングにおいて著名な篠田教授の書籍が私には向いていた。

 「英語がもっとできたら」と国民の8割が思っているようだが、その理由は、何なのだろうか?
 
・英語第二公用語論に
 祖国とは国語  藤原 正彦 (著)
(省略)
 某新聞社の世論調査によると、国民の8割は「英語がもっとできたら」と思っているが、「いつそう思うか」と尋ねると、多いほうから海外旅行時、外人に道を尋ねられた時、映画やテレビを見る時と続くそうである。仕事の上で必要という人は全体のたった18%である。一生に国民一人で数十日の海外旅行や、一生にほんの数回だけ外人に道を聞かれる時のために、英語修得という膨大な労力を全国民に強要するわけにはいかない。
(後略)
祖国とは国語
新潮社 [著] 藤原 正彦
ASIN:4101248087 /文庫/236頁
発売日:2005-12
ランキング&評価:---位 4.5
価格:¥ 420 [2006-06-15 Amache]


 所詮、英語の必要性は、この程度である。小学校から英語教育をしようとすると、変わりに何らかの時間を削る必要がある。国語、算数、理科、社会などの教育時間を削ることは、日本人として教養や魅力が減る。その上、英語能力においては、ネイティブのホームレスにも遠く及ばない。国家として利益にならない薄っぺらな人間を育てる「小学校から英語教育」には、反対である。

 以上、英語教育よりも国語教育の方が多くの国民にとって重要であることを述べてきた。藤原正彦教授によれば、この国語教育において、「読む」「書く」「話す」「聞く」は、平等ではなく、あえて重みを付ければ、20対5対1対1くらいとのこと。これによれば、前回の記事の多読の薦めの方が、わかりやすい文章を書く教育の4倍も重要といえる。
 読むことが重要な理由は、論理の正当性を支える根拠を得ることに留まらず、論理の出発点を創造する情緒を豊かにするからであろう。しかし、この国語教育にも教育の優先度、漢字制限、読み物の削除など、様々な問題があるようだ。

 教育の優先度の問題とは、「読む」「書く」に重点がおかれていた評価基準が、平成14年からの指導要綱改定により、「話す」「聞く」に移っていることだ。重要度が「読む」に比べて20分の1に過ぎない「話す」「聞く」に時間を割くことは愚行である。

※図は石井式国語教育研究会さんより



 漢字制限の問題とは、次のようなことである。
 
・自主検閲をしくまれた日本 江藤
 断固「NO」と言える日本
(前略)
もう一つ影響が今日に及んでいるのは、言葉に対する占領権力の行使です。これは通常、「国語改革」といわれているもので、当用漢字新仮名の強制から始まりました。そこに検閲をするため、なるべく日本語を簡便にしたいというアメリカの意図が作用していたことは否定できないと思います。占領が終わって2年後の昭和29年(1954)から見直しに着手して、歴代の国語審議会がこの問題に取り組んできましたが、いまだに抜本的な改正はできていません。高校以上は原則的に自由だと言っても、義務教育段階で新仮名と制限漢字を強制されるから、事実上国民の国語能力がそれまでにコントロールされてしまいます。その結果、現在の若い人たちは旧漢字旧仮名で書かれた戦前の文献が読めなくなっている。岩波文庫にはいっている夏目漱石の作品さえ、原文を書き替えているというのが現状です。
(後略)
断固「NO(ノー)」と言える日本―戦後日米関係の総括
光文社 [著] 石原 慎太郎, [著] 江藤 淳
ASIN:4334051847 /新書/199頁
発売日:1991-05
ランキング&評価:---位 4
価格:¥ --- [2006-06-15 Amache]
4 - 失われた90年代とは
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

 また、藤原正彦教授も次のように憤慨している。

・(六)これからの国語
 祖国とは国語  藤原 正彦 (著)
 GHQは、漢字は難しすぎるとかタイプライターにのらない、などの取るに足らぬ理由をつけたが、真の理由はもちろん、「日本が二度と立ち上がってアメリカに歯向かうことのないようにする」という大方針のため、文化の中核を破壊してしまおうとしたのである。その後、1981年に常用漢字となったが、漢字数は5%しか増えなかった。このおかげで新聞などは、ら致、破綻、残がい、などと書くようになった。漢字文化圏にある我が国の豊富な言語文化を自らの手で毀損(きそん)したのである。当用漢字も常用漢字も、読める漢字と書ける漢字を一致させる、という不思議な了解の下で作られている。通常、読める漢字は書ける漢字の数倍はある。それでよい。とりわけ情報機器の発達した今日、書ける漢字より読める漢字を大量に増やすことが必要になってきている。漢字制限を根本から考え直す時期にきている。漢字もルビさえ打てば問題ないし、一昔前と違い印刷上の困難もない。

 日本には、至宝ともいえる文学遺産がある。(中略)これだけ豊かなものを小中学校の教科書に導入できない理由は、第一に漢字制限である。小学校では学年別漢字配当表というものがある。目、耳、口は一年生だが鼻は三年生、夕は一年生で朝は二年生などと決められている。上級学年で習うべき漢字は原則として出せないからである。字画が多いほど難しい、という原則により配当されているが、この原則は石井式漢字教育で名高い故石井勲氏によりすでに反証されている。幼児にとっては、九より鳥、鳥より鳩が覚えやすい、ということを実証したのである。なのに配当表は未だそのままである。そのうえ、中学校でも常用漢字以外は出せない。このおかげで、少しでも古い名作は教科書に登場しにくくなり、鷗外や漱石は一掃されたのである。元来、子供はわからない言葉に囲まれて生きている。単語の意味がわからなくても文脈で推測できる。正確で深い意味は後になってわかればよい。教科書も新聞も、ルビをどしどし入れることで本来の豊かな漢字文化を取り戻すべきと思う。
 (後略)
 
祖国とは国語
新潮社 [著] 藤原 正彦
ASIN:4101248087 /文庫/236頁
発売日:2005-12
ランキング&評価:---位 4.5
価格:¥ 420 [2006-06-15 Amache]



※図は石井式国語教育研究会さんより



 読み物の削除問題とは、日本人の情緒を育てるすばらしい読み物が教科書から削除されていることである。漢字制限や国語教育の時間削減にともなって、現在の教科書の内容量は、1980年以前のもの半分となっているようだ。

 これらの問題は、「ゆとり教育」と「GHQの日本解体政策」によって引き起こされたものである。この悪影響は、既に東大の学生にも及んでいる。
 
・東大のバカ学生
 バカの壁  養老 孟司 (著)
 一番印象に残っている醜い例は、東京大学での口述試験での体験。頭の骨を二個。机の上に置いて、学生に「この二つの骨の違いを言いなさい」と聞いたことがある。すると、ある学生が、一分ぐらい黙った挙句に、答えは「先生、こっちのほうが大きいです」。「おまえ、幼稚園の入園試験でリンゴの大きさを比べているんじゃないぞ」と思わず言ってしまったのですが、そういう学生が実際にいる。愕然、呆然でした。
 彼には他の差は目に入っていなかったというか、無理やり出した差がそれだけだったということになる。実物から物を考える習慣がゼロだったということがよくわかった。
 ここでの答えは何でもいいわけです。聞いているのは、彼の者の見方なのだから。数学の正解のようなものは存在しない。その点でいえば、「こっちが大きい」も不正解ではない。しかし、目の前に実際にある物を観察しての回答としてはお粗末としかいいようがない。
 例えば、「状態から見て、こちらの方が古い」でも「こちらは若い男性で、ことらは女性だと思います」でも何でもいい。(中略)それが「大きいです」でおしまい。「こっちのほうが大きいです」と幼稚園児なみです。
 これでは、教師をやる気がなくなってしまう。そんな学生が東大を出て何年かしたら偉いお医者さんだ、ということになるのだとすれば、責任が持てない。
 (後略)
バカの壁
新潮社 [著] 養老 孟司
ASIN:4106100037 /新書/204頁
発売日:2003-04-10
ランキング&評価:---位 2.68
価格:¥ 714 [2006-06-15 Amache]
5 - 批判は多いが…。
3 - 好き嫌いがあると思います
4 - 結構いいこと言ってる。
3 - 少し言い過ぎな部分も
1 - 一番のバカは私


 国語教育を早急に改善する必要がある。これを皮肉めいていうと、冒頭の「小学校から英語を教えることは、日本を滅ぼす最も確実な方法です。」となる。

【H21.3.22追記】
 石井式の石井勲先生に関する記事を見つけたので、引用する。

子どもを伸ばす漢字教育
 国際派日本人養成講座 H15.11.23
■1.2歳の幼児が漢字を読んだ!■

 きっかけは偶然だった。小学校教師の石井勲氏が炬燵(こたつ)に入って「国語教育論」という本を読んでいた。そこに2歳の長男がよちよち歩いてきて、石井氏の膝の上に上がり込んできたので、氏は炬燵の上に本を伏せて置いた。

 その時、この2歳の幼児が「国語教育論」の「教」という漢字を指して「きょう」と言ったのである。びっくりして、どうしてこんな難しい字が読めたんだろう、と考えていると、今度は隣の「育」の漢字を指して「いく」と言った。

 石井氏が驚いて、奥さんに「この字を教えたのか?」と尋ねると、教えた覚えはないという。教えてもいないものが読めるわけはない、と思っていると、奥さんが「アッ! そう言えば一度だけ読んでやったことがある」と思い出した。奥さんは音楽の教師をしており、「教育音楽」という雑誌を定期購読していた。ある時、息子が雑誌のタイトルを指で押さえて、「これなあに?」と聞くので、一度だけ読んでやったような記憶がある、というのである。

 そんなこともあるのか、と半信半疑ながら、ひょっとしたら、幼児にとって漢字はやさしいのかもしれない、と石井氏は思いついた。ひらがなは易しく漢字は難しい、幼児に教えるものではない、と思いこんでいたが、実はそうではないのかもしれない。これが石井式漢字教育の始まりだった。

■2.漢字学習で幼稚園児の知能が伸びた!■

 それから石井氏は昭和28年から15年にもわたって、小学校で漢字教育を実践してみた。当初は学年が上がるにつれて、子どもの学習能力が高まると信じ込んでいたが、実際に漢字を教えてみると、学年が下がるほど漢字を覚える能力が高いことが分かった。

 そこで今度は1年生に教える漢字を増やしてみようと思った。当時の1年生の漢字の習得目標は30字ほどだったが、これを300字ほどに増やしてみると、子供たちは喜んでいくらでも吸収してしまう。それが500字になり、とうとう700字と、小学校6年間で覚える漢字の8割かたを覚えてしまった。

 ひっとしたら就学前の幼児は、もっと漢字を覚える力があるのかもしれない。そう思って昭和43年からは3年間かけて、幼稚園児に漢字を教えてみた。すると幼児の漢字学習能力はさらに高いということが分かってきた。同時に漢字学習を始めてからは幼児の知能指数が100から110になり、120になり、ついには130までになった。漢字には幼児の能力や知能を大きく伸ばす秘密の力があるのではないか、と石井氏は考えるようになった。

■3.複雑でも覚えやすい漢字■

 どんな子どもでも3歳ぐらいで急速に母国語を身につけ、幼稚園では先生の話を理解し、自分の考えを伝えることができる。この時期に言葉と同時に漢字を学べば、海綿が水を吸収するように漢字を習得していく、というのが石井氏の発見だった。漢字は難しいから上級生にならなければ覚えられない、というのは、何の根拠もない迷信だったわけである。

 同時に簡単なものほど覚えやすい、というのも、誤った思いこみであることが判明した。複雑でも覚える手がかりがある方が覚えやすい。たとえば「耳」は実際の耳の形を表したもので、そうと知れば、簡単に覚えられる。「みみ」とひらがなで書くと画数は少ないが、何のてがかりもないのでかえって覚えにくい。

 石井氏はカルタ大の漢字カードで教える方法を考案した。「机」「椅子」「冷蔵庫」「花瓶」などと漢字でカードに書いて、実物に貼っておく。すると幼児は必ず「これ、なあに?」と聞いてくる。そこではじめて読み方を教える。ポイントは、遊び感覚で幼児の興味を引き出す形で行うこと、そして読み方のみを教え、書かせないことである。漢字をまず意味と音を持つ記号として一緒に覚えさせるのである。

■4.抽象化・概念化する能力を伸ばす■

 動物や自然など、漢字カードを貼れないものは、絵本を使う。幼児絵本のかな書きの上に、漢字を書いた紙を貼ってしまう。そして「鳩」「鴉」「鶏」など、なるべく具体的なものから教えていく。すると、これらの字には「鳥」という共通部分があることに気づく。幼児は「羽があって、嘴(くちばし)があって、足が2本ある」のが、「鳥」なのだな、と理解する。ここで始めて「鳥」という「概念」が理解できる。

 これが分かると「鶯」や「鷲」など、知らない漢字を見ても、「鳥」の仲間だな、と推理できるようになる。こうして物事を概念化・抽象化する能力が養われる。

 またたとえば「右」、「左」など、抽象的な漢字は「ナ」が「手」、「口」は「くち」、「工」は「物差し」と教えてやれば、食べ物を口に入れる方の手が「右」、物差しを持つ方の手が「左」とすぐ覚えられる。そう言えば、筆者は小学校低学年の時、右と左の字がそっくりなので、どっちがどっちだか、なかなか覚えられなかった記憶があるが、こう教わっていたら瞬時に習得できていただろう。

■5.推理力と主体性を伸ばす■

 また一方的に教え込むのではなく、遊び感覚で漢字の意味を類推させると良い。石井式を実践している幼稚園でこんな事があった。先生が黒板に「悪魔」と書いて、「誰かこれ読めるかな」と聞いた。当然、誰も読めないので、「じゃあ、教えてあげようね」と言ったら、子供たちは「先生、待って。自分たちで考えるから」。

 子供たちは相談を始めて、「魔」の字の下の方には「鬼」があるから、これは鬼の仲間だ、、、こうしてだんだん詰めていって、とうとうこれは「あくま」じゃないか、と当ててしまった。

 この逸話から窺われるのは、第一に、幼児にも立派な推理力がある、という事だ。こういう形で漢字の読みや意味を推理させるゲームで、子どもの論理的な思考能力はどんどん伸びていく。第二は、子どもには自分で考えたい、解決したい、という気持ちがあるということである。そういう気持ちを引き出すことで、子どもの主体的な学習意欲が高まる。そして自ら考えて理解できたことこそ、本当に自分自身のものになるのである。

■6.漢字から広がる世界■

 石井式の漢字教育と比較してみると、従来のひらがなから教えていく方法がいかに非合理的か、よく見えてくる。たとえば、「しょうがっこう」などという表記は世の中に存在しない。校門には「○○小学校」などと漢字で書かれているのである。「小学校」という漢字熟語をそのまま覚えてしまえば、近くの「中学校」の側を通っても、おなじ「学校」の仲間であることがすぐに分かる。「小」と「中」の区別が分かれば、自分たちよりやや大きいお兄さん、お姉さんたちが行く学校だな、と分かる。

 こうして子どもは、漢字をたくさん覚えることで、実際の社会の中で自分たちにも理解できる部分がどんどん広がっていくことを実感するだろう。石井氏の2歳の長男も、お父さんが読んでいる本の2つの文字だけでも自分が読みとれたのがとても嬉しかったはずだ。だから、僕も読めるよ、とお父さんに読んであげたのである。

 このように漢字を学ぶことで外の世界に関する知識と興味とが増していく。本を読んだり、辞書を引けるようになれば、その世界はさらに大きく広がっていく。幼児の時から漢字を学ぶことで、抽象化・概念化する能力、推理力、主体性、読書力が一気に伸びていく。幼児の知能指数が漢字学習で100から130にも伸びたというのも当然であろう。

 漢字学習を通じて、多くの言葉を知り、自己表現がスムーズに出来るようになると、情緒が安定し、感性や情操も豊かに育っていく。石井式を取り入れた幼稚園では、「漢字教育を始めて一ヶ月くらいしたら、園児たちの噛みつき癖がなくなりました。」という報告がしばしばもたらされるという。子供たちのうちに湧き上がった思いが表現できないと、フラストレーションが溜まって噛みつきという行為に出るが、それを言葉で表現できると、心が安定し、落ち着いてくるようだ。最近の「学級崩壊」、「切れやすさ」というのも、子どもの国語力が落ちて、自己表現ができなくなっている事が一因かもしれない。

■7.自閉症児が変わった■

 NTTと電気通信大学の共同研究では、「かな」を読むときには我々は左脳しか使わないが、漢字を読むときには左右の両方を使っているということを発見した。左脳は言語脳と呼ばれ、人間の話す声の理解など、論理的知的な処理を受け持つ。右脳は音楽脳とも呼ばれ、パターン認識が得意である[a]。漢字は複雑な形状をしているので、右脳がパターンとして認識し、それを左脳が意味として解釈するらしい。

 石井氏は自閉症や知的障害を持った子供にも漢字教育を施して、成果をあげている。これらの子どもは言語脳である左脳の働きが弱っているため、言葉が遅れがちであるが、漢字は右脳も使うので、受け入れられやすいのである。

 石井氏が校長をしていた小学校にはS君という自閉症児がいた。授業中、机に座っていることができずに、廊下に出てはぐるぐると左回りを続けているという子どもだった。校長としてS君を引き取った石井氏は、彼が電車に関心を持っているのを見つけた。絵を描かせると、黄色い電車と新幹線を描く。「黄色いのは総武線で、東京に行くんでしょ。」と行って電車のそばに「東京」と書いてやった。新幹線にほうにも「新幹線」と書いてやると、S君は本当に嬉しそうに笑った。

 翌日、また絵を描かせると、今度は電車の絵に「東京」「新幹線」という文字に似た模様を書き付けていた。これを生かさない手はない、と思った石井氏は、S君のお母さんを呼んで夏休みの間、毎日5分でいいから「漢字カード」で遊んでやってください、と頼んだ。

 休みが終わると、お母さんが200枚もの漢字カードを持って、「あまりにS君の反応が良いので、どんどんやっていったら、こんなにできた」という。

 夏休み明けのS君にクラスの友だちは驚いた。「S君が授業中ずっと椅子に座れるようになった」「体育の時間に皆と一緒に駆け足をやった」そしてついに「S君が教科書を開いた。」

 S君は家でお父さんと一緒にお風呂に入っている時、「学校で勉強、頑張るからね」と言った。父親は思わずS君を抱きしめて「頑張れよ」と励ましたそうである。[2,p166]

■8.漢字かな交じり文の効率性■

 漢字が優れた表記法であることは、いろいろな科学的実験で検証されている。日本道路公団が、かつてどういう地名の標識を使ったら、ドライバーが早く正確に認識できるか、という実験を行った。「TOKYO」「とうきょう」「東京」の3種類の標識を作って、読み取るのにどれだけの時間がかかるかを測定したところ、「TOKYO」は1.5秒だったのに対し、「とうきょう」は約半分の0.7秒、そして「東京」はさらにその十分の一以下の0.06秒だった。

 考えてみれば当然だ。ローマ字やひらがなは表音文字である。読んだ文字を音に変換し、さらに音から意味に変換する作業を脳の中でしなければならない。それに対し漢字は表意文字でそれ自体で意味を持つから、変換作業が少ないのである。

 日本人はこの優れた、しかしまったく言語系統の異なる漢字を導入して、さらにそこから、ひらがな、カタカナという表意文字を発明した。その結果、数千の表意文字と2種類の表音文字を使うという、世界でも最も複雑な表記システムを発明した。たとえば、以下の3つの文章を比べてみよう。

朝聞道夕死可矣あしたにみちをきかばゆうべにしすともかなり朝に道を聞かば夕に死すとも可なり

 漢字だけ、あるいは、ひらがなだけでは、いかにも平板で読みにくいが、漢字かな交じり文では名詞や動詞など重要な部分が漢字でくっきりと浮かび上がるので、文章の骨格が一目で分かる。漢字かな交じり文は書くのは大変だが、読むにはまことに効率的なシステムである。

 情報化時代になって、書く方の苦労は、かな漢字変換などの技術的発達により、急速に軽減されつつあるが、読む方の効率化はそれほど進まないし、また情報の洪水で読み手の負担はますます増大しつつある。読む方では最高の効率を持つ漢字かな交じり文は情報化時代に適した表記システムであると言える。

■9.漢字教育で逞しい子どもを育てよう■

 英国ケンブリッジ大学のリチャードソン博士が中心となって、日米英仏独の5カ国の学者が協力して、一つの共通知能テストを作り上げた。そのテストで5カ国の子ども知能を測定したところ、日本以外の4カ国の子どもは平均知能指数が100だったのに、日本の子どもは111だった。知能指数で11も差が出るのは大変なことだというので、イギリスの科学専門誌「ネイチャー」に発表された。

 博士らがどうして日本の子どもは知能がずば抜けて高いのか、と考えた所、この5カ国のうち、日本だけが使っている漢字に行き着いたのである。この仮説は、石井式で知能指数が130にも伸びる、という結果と符合している。

 戦後、占領軍の圧力や盲目的な欧米崇拝から漢字をやめてカタナカ書きやローマ字書きにしよう、あるいはせめて漢字の数を減らそうという「国語改革」が唱えられ、一部推進された。こうした科学的根拠のない「迷信」は事実に基づいた石井式漢字学習によって一掃されつつある。

 国語力こそ子どもの心を大きく伸ばす基盤である。国語力の土壌の上に、思考力、表現力、知的興味、主体性などが花開いていく。そして国語を急速に習得する幼児期に、たくさんの漢字を覚えることで、子どもの国語力は豊かに造成されるのである。

 石井式漢字学習によって、全国津々浦々の子供たちが楽しく漢字を学びつつ、明日を担う日本人としての逞しい知力と精神を育んでいくことを期待したい。
(文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(240) 日本語が作る脳
虫の音や雨音などを日本人は左脳で受けとめ、西洋人は右脳で
聞く!?
b. JOG(221) 漢字と格闘した古代日本人
外来語を自在に取り込める開かれた国際派言語・日本語は漢字
との国際的格闘を通じて作られた。

■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
1. 石井勲、「0歳児から始める脳内開発」★★★、蔵書房、H8
2. 石井勲、「石井式で漢字力・国語力が驚くほど伸びる」★★、
コスモトゥーワン、H13


楽しい漢字教室



ぎょうせい [著] 石井 勲

ASIN:4324022704 /単行本/1034頁

発売日:1990-12

ランキング&評価:---位 5.0

価格:¥ 3,570 [2009-03-22 Amache]
5 - 大人も勉強になります。




続・楽しい漢字教室―上級・中級編



ぎょうせい [著] 石井 勲

ASIN:4324063346 /単行本/949頁

発売日:2002-02

ランキング&評価:---位 5.0

価格:¥ 4,800 [2009-03-22 Amache]
5 - 本棚に置いておきたい辞典




【関連記事】
・(H18.3.12)そのうち経済の分野も述べたいが、今回は・・・
・(H18.5.14)Blogを執筆し、早1年。得たことは・・・。
・(H18.5.20)小学校から英語を教えることは、日本を滅ぼす最も確実な方法です。
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基本的に角が立たないように生きてますが、理不尽に尻尾を踏まれると赦せません。
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